渋谷アメデオ

SHIBUYA Amedeo

年の瀬ぐらい前向きに終われる暮らしがしたい

 ノストラダムスの大予言が 1999 年、記念すべきミレニアムイヤーに世界が沸き立ったのが 2000 年、新世紀の始まりに夢と希望を膨らませたのが 2001 年。その時の僕は中学 2 年生から高校 1 年生で、多感な時期にインターネットと共に過ごし、モニタを通して世界を眺めては、自分はなんでこんなところにいるのだろうと悶々とする日々を過ごしていた。ノストラダムスの大予言が現実になってもならなくても田舎の中学生だった僕には関係のないことだったし、2000 年問題で世間が頭を抱えていてもいなくてもケータイすら持っていなかった僕には関係のないことだった。大晦日のあの日、リビングでテレビを観ながら、僕が今この瞬間に東京で暮らしていないのは何故なんだろうとぼんやり考えていた。生まれてくるタイミングが悪かったんだ、と自分の出生のタイミングを呪ってもいた。出生のタイミングはさすがに自分ではどうにもならないのにね。どうにもならないことをどうにもならないものとして受け止めて、呪って、その上で諦めてしまう僕の癖は、この時期に養われたような気がする。

 この 1 年間で、父親との仲がさらに悪化した。悪化しないように関わらないようにしていたのだけれど年齢的にも家の問題は避けづらかった。詳細には書けないのだけれど、ここ数年間続いていた相続問題で、勝手に期待され、勝手に喜ばれ、勝手に失望され、今は父親から失敗作扱いされるフェーズに入りかけている。このまま上手くいけば父親からは勘当され、最初から居なかった扱いになると思う。うちの家族は姉ちゃんが早々に勘当されており、家族の行事も姉ちゃん不在で進められる。この前さ、爺さんの葬式かなんかの挨拶で父親が「こうして孫全員に見送られ」とか言っててさ、笑っちゃったよ、ここに姉ちゃん居ねえじゃん、つって。全員揃ってないじゃん、つって。

 来年、引っ越ししようと思っているんだ。転職しようとも思っている。あと、犬を飼うんだ。イタリアングレーハウンドって知ってる? 脚が折れちゃいそうなぐらい細いんだけど、流線型の走るフォルムがとても美しくて、すごく活発な犬種なんだ。短毛のシングルコートだから抜け毛も少ないし、匂いもほとんどないんだよ。ちょっとネズミっつーかカンガルーみたいな顔しているけど、それはそれで愛嬌があって可愛いよね。犬なんて飼ったら恋人ができなくなる? それみんなよく言うけど、恋人のことなんだと思ってんの?

 自分には無理だから、これが今の自分の能力だからと諦めてきたのは青春時代にミレニアムイヤーを片田舎で過ごしてきてしまったことと、父親との関係性から生じた、自分で自分にかけた呪い。平成も終わることだし、全てをぶっ壊して新しい何かに挑戦するにはちょうどいい気がしてきた。